一般社団法人

文化産業科学学会

The Society for Science of Cultural Industry

一般社団法人 文化産業科学学会は、文化産業を科学し、文化の振興や発展・国内外への展開を図ることを目的とした学術研究(査読付き学術論文雑誌を発行する)を行う、広範な分野に関わる学術学会です。


NEWS

・2021430

日本経済新聞 朝刊 ネクストストーリーに石山徹の記事が掲載。

 

2021423

日本経済新聞 電子版 ネクストストーリーに、石山 徹の記事が掲載。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK227OL0S1A320C2000000/

 

202134

文部科学省 文化庁 文化政策審議会 文化政策部会 アート市場活性化ワーキンググループにて、有識者として講演発表

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/seisaku/18/art_wg02/index.html

 

過去のニュース



本学会の紹介とご挨拶

 文化産業科学学会は、文化産業を科学し、文化の振興や発展、国内外への展開を図ることを目的とした学術研究(査読付き学術論文雑誌を発行する)を行う、広範な分野に関わる学術学会です。

 

 『文化』と聞くと、幅広い意味合いが想起できますが、①文化・芸術と称されるクラフトやアート、②国民性、民族性、思考習慣や価値観、世界観、③地域文化、④宗教や風俗、慣習、⑤商習慣や法律、制度、⑥道徳や倫理体系、⑦ファッションや食文化、観光などの文化的産業などに大別できるとともに、文学や民俗学あるいは農学を始め、法学や医学そして工学など多くの学問分野に関わるのではないかと思います。


 日本の文化や芸術関連分野は、潜在的価値が高く、世界的に見てもオリジナリティーがあるとされています。一方で、日本の文化・芸術は、なかなか高付加価値化やブランド化による経済的効果につなげることができていないという課題があります。本学会では、このような課題を、分野内の観念論や経験則、慣習で対応するのではなく、多分野の知見を活用して融合科学的にアプローチすることで、理論研究だけにとどまらず、理論の実践研究を行い、精力的に実現していかれればと考えております。


 21世紀は、『物質経済から感性経済へ』と言われています。モノや商品、サービスがあふれ、物質的な機能や性能だけでは差別化ができず、デザインや文化的な特性などを起点にした、より感覚的、感性的な要素で、経済や社会が動く時代だと言われています。そして、これらの感性的要素が農山漁村など地域を対象とするブランド価値や高付加価値に直結してくるため、ローカルの価値がグローバルに拡大する中で、経済や社会にも影響してくると考えられています。


 本学会は、上記のような現代社会や経済の動向を踏まえ、既存の文理・芸術分野の壁にとらわれず、総合科学的な視点から、文化の産業化を目指し、社会及び経済の発展に寄与するための学際的理論と実学的実践、及び教育・能力開発研究を行います。
 以上が本学会の趣旨と目的です。

 

 


学会長の紹介

 

学会長・代表理事 阪田 徹  Ph.D.


 

 日本大学大学院総合科学研究科博士一貫課程修了、博士(学術)。脳医学・脳科学の世界的権威である林成之氏に師事。脳医学、脳科学の理論を応用した描画の融合科学の研究、文化・芸術の融合科学的な研究を行う。

 2015年 東京農業大学 客員教授 就任、2015年 文化産業科学学会 学会長 就任、2019年 京都芸術大学 客員教授 就任、2023年 福井工業大学 客員教授 就任。文化批評家、文化産業科学者。ISHIYAMA CRITIC OFFICE 所長。脳科学、心理学、経済学、芸術学、教育学を起点にした、融合科学的な視点から文化・芸術を基軸にした産業科学、ブランド戦略、批評、教育の研究(文化産業科学)を行う。

 


名誉理事の紹介

 

名誉理事 徳岡 邦夫


 京都吉兆 総料理長、2016年 東京農業大学 客員教授 就任、2015年 文化産業科学学会 名誉理事 就任。

 1960年生まれ。「𠮷兆」創業者湯木貞一氏の孫にあたる。1980年から本格的に修行を始め、貞一から料理の核心を学ぶ。1995年から総料理長として現場を指揮し、2009年には株式会社京都𠮷兆 代表取締役社長に就任。2004年頃より海外の料理イベントにも積極的に参加し始め、2008年にはG8(洞爺湖サミット)にて社交晩餐会を担当。『ミシュランガイド 京都・大坂』にて嵐山本店 3つ星、HANA吉兆 1つ星評価(以降、現在に至るまで9年連続同評価)

 国内では、地域活性化や第一産業の現場における様々な課題解決に取り組む。伝統を守りながらも時代に即した食への多方面からのアプローチに挑戦し続け、日本料理に多彩な演出、提案を行い、日本食の啓蒙に尽力する。

 


シニアアドバイザーの紹介

 

シニアアドバイザー 山口 浩


1960年、兵庫県生まれ。日本のフランス料理シェフ。フランスの名店でミシュラン3つ星の「ラ・コート・ドール」にて、ベルナール・ロワゾーに師事。2000年、神戸北野ホテル運営会社の代表取締役、総支配人・総料理長。一般社団法人 全日本・食学会理事。2008年 神戸マイスター、2011年 ルレ・エ・シャトー・グランシェフ、2015年 料理マスターズ(日本の農林水産省)、2016年 フランス共和国農事功労章 シュヴァリエ勲章、2017年 現代の名工、2017年 兵庫県 技能顕功賞、2018年 秋の褒章 黄綬褒章。

 


“文化芸術教育” と “文化芸術産業教育” の相違点

1、日本の「文化芸術教育」の特徴と課題

 

 日本の文化芸術教育は、大雑把にまとめれば、「文化芸術の愛好、振興、情操や感性を育むこと」を主目標としています。既存の文化芸術教育は、教育学や芸術学、哲学などの学問体系によって構築されています。このような教育的特徴は、小・中・高と続き、美術系の大学でも継承される部分が少なくありません。

 

 既存の文化芸術教育の課題としては、「文化芸術関係者の内輪・業界目線の論理」が少なくないことではないかと考えます。日本で一層の文化芸術の振興や愛好を広めていく上では、価値観や評価尺度が異なる様々な人に対して、「文化芸術の必要性や重要性、あるいは機能性などの公的説明責任」を果たすことが求められると思います。

 しかしながら、現状では、「文化芸術関係者目線で構築された内輪目線の論理」での説明や必要性が大部分を占め、価値観が異なる異文化、異分野・異業種の人(例えば、文化芸術は一般論としては価値を認めるが、優先順位は他のものと比較して低いと考える人など)への「社会目線・外野目線」での説明や交渉ができているとは言いがたい状況だと考えます。

 このような日本の既存の文化芸術教育では、文化芸術は「趣味・趣向・道楽」といったイメージを持ちかねないリスクがあります。文化芸術が、個人や特定の集団の趣味・趣向・道楽の対象とうつると、社会レベルや政策レベルでの文化芸術振興の際に、以下の2つの問題が出てきます。

 

 1つ目の問題は、社会レベル、政策レベルでの投資を行うにあたって、客観的・機能的な側面も含めた「税金」を使うだけの公的説明責任を果たしにくくなることです。

 2つ目の問題は、日本において、文化芸術は、「一部の関係者やマニア・オタク」の「趣味・趣向・道楽」であって、「広く価値観の異なる人々」にとっての「教養」としては、自立・確立しにくいという点です。

 

 日本での文化芸術の社会的地位の向上や公的説明責任の達成、あるいは教養としての自立・確立のためには、まずは現状確認のテストが有効だと思います。具体的には、文化芸術に対して、「社会目線」での「So What? テスト(だから、何だ?)」を行ってみるのが良いかもしれません。すると、既存の文化芸術の論理が、テストを数回繰り返すだけで、答えに行き詰ってしまうことに気づくかと思います。

 

 

 

2、文化産業科学学会が提示する「文化芸術産業教育」の特徴とは

 

 先進国の条件や特徴の1つに、「自国の文化や芸術を産業化し、国際的プレゼンスを高める」というものがあります。日本は、GDP世界3位の経済大国であり、文化芸術のポテンシャルも高いといわれています。問題は、日本の文化芸術の多くは、「①産業として自立・確立できておらず、②従事者・関係者の経済的状況が芳しくなく、③経済的要因によって、後継者や継承ができないケースも出てきていること」です。

 日本が、フロー経済からストック経済へと移行し、成熟社会・成熟経済へと近づくにあたって、近年では、日本政府も「文化経済」の可能性と必要性を言及するに至りました。それに伴い、日本独特の文化芸術の産業化の課題が明確になってきました。

 

 先ほども述べてきましたが、日本の文化芸術の産業化を国レベルで促進するためには、以下の2つの問題があります。

 1つ目の問題は、社会レベル、政策レベルでの投資を行うにあたって、客観的・機能的な側面も含めた「税金」を使うだけの公的説明責任を果たしにくい。

 2つ目の問題は、日本において、文化芸術は、「一部の関係者やマニア・オタク」の「趣味・趣向・道楽」であって、「広く価値観の異なる人々」にとっての「教養」としては、自立・確立しにくい。

 

 上記の問題は、「既存の文化芸術教育」では、解決が困難だと思います。かわりに、これらの問題には、「文化芸術産業教育」の論理や体形が有効ではないかと考えます。

 この2つの文化芸術に関する教育は、そもそも競合するものではありません。

 「文化芸術教育 ≒文化芸術産業教育」ではありませんし、ましてや「文化芸術教育 > 文化芸術産業教育」という力関係があるわけでもありません。この2つは、目的も目標も異なるため、同じ価値観や評価基準で議論することはできません。

 一方で、日本の文化芸術の産業化が実現できれば、文化芸術の社会的影響力や経済的影響力、雇用や関連産業の発展により、より広い価値観の人に文化芸術の必要性や社会的評価が高まると予想できます。それにより、既存の文化芸術の教育効果も高まり、日本の文化芸術の優先順位や社会的地位の向上も実現できる可能性があります。

 

 海外先進国の大学にある芸術分野の専攻には、①文化・芸術学的専攻と、②文化芸術の産業・マネジメントの専攻、の2つがあり、相互補完の関係にあります。日本には、②の部分が自立・確立されていない状況です。つまり、文化芸術の産業化の教育は、別段、変わったことではないのです

 以上より、「内輪・業界目線の既存の文化芸術教育」と「外野・社会目線の文化芸術産業教育」の2つがあると考えます。両者は、共通する部分もありますが、明らかに目的や目標が異なる部分も多々あります。

 文化産業科学学会の研究・開発アプローチは、あくまでも「外野・社会目線の文化芸術産業教育」に該当するものです。